あるとき幼い愛の神が横になって眠り
傍らに恋心に火をつける松明を置くと
純潔の生活を守るという誓いを立てた
沢山のニュンフが軽やかに寄ってきた。
その中で最も麗しい信徒は無垢な手に
無数の真心を熱くしてきた炎を取った。
かくして熱愛を導く将軍は眠った間に
乙女の手によって武装を解かれたのだ。
ニュンフは冷たい泉で松明を消したが
泉は愛の炎から永遠の熱気をもらって
病人の健康を回復させる温泉となった。
だが、愛する彼女に囚われている僕は
治療のために泉へ来て知ってしまった
水が愛に沸いても愛は水に冷めないと。
クピドは愛の松明のそばで眠っていた。
処女神ディアナの侍女は好機を逃さず
愛を灯す炎が燃える松明の先を素早く
その渓谷の冷たい泉に浸してしまった。
するとその泉はこの愛の聖なる炎から
生き生きとした永遠の熱気をもらって
癒やしの温泉となり、今日でも人々は
難病の特効薬になると通っているのだ。
僕の恋人の瞳に新しく愛の炎が灯ると
少年の神は試しに僕の胸へ火を分けた。
僕はこうして恋を患い、助けを求めて
例の温泉へと急ぐ重病の旅人となった。
僕を癒やすただ一つの温泉が湧くのは
クピドが炎を見つけた僕の恋人の瞳だ。
君を愛した僕は確かに偽誓を犯したが
僕に愛を誓った君は二重の偽誓をした。
君はベッドで誓い直した約束を裂いて
また愛を育み、また憎むと誓ったのだ。
君の二回の誓約違反を責められるのか
二十回は背いた僕に?僕こそ偽誓者だ。
僕は全ての誓いを君への誤解に捧げて
全ての立派な信義を君のために失った。
僕は深く誓ったのだ、君に深い優しさ、
愛、誠実さ、変わらなさがあることを。
君を光らせるために盲目にした両目で
見えるものに反する誓いを立てたのだ。
僕は君が麗しいという瞳の偽誓も重ね
真実に反する醜い嘘を誓ってしまった。
愛は良心を知るには幼すぎるものだが
良心の親としても知られるではないか?
優しい詐欺師よ、僕の過ちは責めるな
僕の罪が甘い君のせいだとばれるから。
君が僕を裏切ると、僕も自分を裏切り
高貴な部分を低劣な肉体へと引き渡す。
僕の魂が僕の肉体へ語る通り、肉体は
愛の勝利者に、理性を失った肉になる。
この肉は君の名で目覚め、君を目指し、
君を戦利品とする。武勲への誇りから
君の哀れな奴隷に甘んじるようになり
君に起こされて働き、君の側で倒れる。
良心がないとは言うな、愛する彼女の
貴い愛のために僕は起き、倒れるのだ。
ああ!君は何からその強大な力を得て
無力な僕の心を支配するに至ったのか?
僕の誠実な視覚が嘘に屈するようにし
白昼には輝きがないと偽誓させる力を?
どうやって君は悪事を綺麗にしたのか、
君の素行の中にあるごみ同然の悪行は
どうやってあの力強く確かな技を操り
最悪が最善の上にあると思わせたのか?
誰が君に僕の愛の強め方を教えたのか
僕は憎む正当な根拠を見聞きしたのに?
ああ!僕は他人が嫌うものを愛するが
君は他人と一緒に僕の様子を嫌うのだ。
無価値さが僕から君への愛を生むなら
僕だって君に愛されるに値するはずだ。
何と残酷な!愛が足りないと言うのか
僕は自分に逆らって君と共にいるのに?
僕は君のことを考えてないのだろうか
暴君よ、君のために我を忘れていても?
僕は君を嫌う人を友と呼んだだろうか、
君に眉をひそめる人に媚びただろうか、
まして君に顔をしかめられたら、僕は
心痛を自分への復讐としないだろうか?
どんな美徳を僕は大事にしているのか、
君への奉仕を厭うほどご立派な美徳が
君の欠点に向かって全力の礼拝を挙げ
君の目配せを戒律とする僕にあるのか?
しかし嫌えばいい、つまり愛する君は
盲目な僕より目のある人が好きなのだ。
全く!恋が頭に付けた目玉は何なのか、
真実の光景に対応するものが映らない、
あるいは映っても判断力が消え失せて
正しく見たものを誤って評価するとは?
僕の虚偽の目が麗しいと溺愛する人を
どうして世間は麗しくないと言うのか?
麗しくなければ、恋は示すことになる
恋する目は人々の目よりも頼りないと。
当然ではないか?ああ!恋をした目が、
不眠や涙に苦しむ目がどう頼れるのか?
僕が見間違えるのも驚くことではない
太陽も空が晴れるから前が見えるのだ。
ああ、卑怯な恋よ!涙で僕を盲目にし
君の欠点をわからなくしてしまうとは。
僕の恋心は言わば長引いている熱病だ
病気を長々と看護してきた末路なのだ。
僕は病害を維持するような食事を摂り
浮かれた病んだ欲求を満たそうとした。
僕の恋心を治す医者である僕の理性が
僕が指示通りのことをしないのに怒り
僕を見捨てると、今度は絶望した僕が
医者の禁止した欲望で死のうと試みる。
今や理性も治らない僕の心配はやめた
休みのない狂気に冒された頭の心配は。
僕の思考や議論はまるで狂人のように
広く言われている真理から外れていく。
僕は色白でと誓い、眩しいと思うのだ
君に備わる冥界の黒さと闇夜の暗さを。
哀れな魂よ、僕の罪深い地球の中心よ、
[__]対抗勢力を身に揃えているが
なぜお前は内側で飢え苦しみながらも
その壁の外には無理に陽気を装うのか?
なぜ期限はすぐ来るのに費用をかけて
その消え行く豪邸を保とうとするのか?
相続者の蛆虫たちが費用をかけ過ぎた
肉体を食い尽くせば終わりが来るのか?
ならば魂よ、下僕の分で自身を養って
下僕にはその蓄えを渇望させるがいい。
着飾る時間を売り、来世の時間を買え。
外面の富はもういいから、内面を養え。
人々を食らう死を魂で食らい返すなら
死そのものが死に、死は無くなるのだ。
恋がその手で作り、彼女に与えた唇が
息に乗せて「嫌い」という音を発した
彼女のために思い悩んできた僕の方へ。
だが僕の痛ましい様子を目にしたとき
憐れみが彼女の心へと差し込んできて
甘く囁くはずの舌を叱りつけてくれた
それまで優しい運命を語ってきた舌を。
そして改めて挨拶の仕方を教えたのだ。
彼女が「嫌い」の後に言葉を加えると
その言葉は優しい昼のように夜に続き
昼に追われた夜はまるで悪魔のように
天国から地獄へと追い払われていった。
「嫌い」と憎しげに言い放った彼女は
「君の事じゃないよ」と僕の命を救う。
二人の恋人は僕に元気と絶望を授ける
説得を続ける善い霊と悪い霊のように。
善い方の天使は清く正しい彼氏であり
悪い方の悪霊は色の濃い悪党の彼女だ。
悪い彼女は僕を早く地獄へ落とすため
善い天使である彼氏を僕から絡め取り
僕の聖人を悪魔になるまで堕落させる
卑劣な得意技で純粋な彼に言い寄って。
僕の天使が悪魔に変わるのかどうかは
わからないし、はっきりとは言えない。
しかし僕から離れた二人の仲が良いと
天使は悪魔と地獄にいるように思える。
だがわからない以上は疑って暮らそう
悪い天使が善い天使を焼き払うまでは。
ご覧、家政に気を遣う主婦は駆け足で
脱走した一羽の鶏を捕まえるためなら
赤子を降ろして、全速力で出ていって
鶏を引き止めるために追いかけていく。
放置された子供はその主婦の後を追い
捕まえようと泣きつくが、一方彼女は
目の前を飛び回る鶏を追うので忙しく
可哀想な赤子の不満は気にも留めない。
君もまた飛び回る人を走って追いかけ
君の赤子である僕は遠ざかる君を追う。
望むものを手に入れたら、帰ってきて
母親の役を演じ、キスと優しさをくれ。
君が「ウィル」を得られるよう祈ろう
泣き叫ぶ僕を宥めに戻ってくれるなら。
愛が僕の罪なら君の貴い徳は憎しみだ
罪深い愛に根ざす僕の罪への憎しみだ。
ああ!だが君は自分と僕の状態を比べ
咎めるほどのものではないと知るのだ。
咎めるべきでも、君の唇にはできない
その唇は身に纏った緋色の装飾を汚し
僕の唇のように愛の契約書を偽造して
他人の宿代からベッド分を盗み取った。
君への僕の愛も君の多くの愛も合法だ
人を口説く君の瞳も君に縋る僕の瞳も。
君の心に憐れみを植えて、育ててくれ
憐れまれるに値する憐れみになるまで。
人に隠して自分は得ようと求めるなら
君は君を拒む手本を見せることになる!
正直、僕は瞳で君を愛する訳じゃない
瞳は君の中に千もの誤りを見てしまう。
だが僕の心は瞳の嫌う人を愛している
見た目はともかくその人に溺れている。
僕の耳も君の話す音色を喜びはしない。
敏感な触覚も手触りが並みだと無視し
味覚や嗅覚が欲望をそそることもない
それぞれの感覚で君を味わうだけでは。
僕の五つの感覚なら押しとどめられる
君に仕えようとする一つの愚かな心を、
人間もどきになったまま戻ってこない
君の傲慢な心の奴隷を、惨めな家来を。
僕が唯一つ手に入れた彼女という病は
僕に罪を負わせて、僕を痛みで罰する。
残酷な君を賢明にし、手加減してくれ
口を噤む僕の忍耐に侮蔑で迫るときも。
悲しみが言葉を僕に貸し、その言葉が
憐れみを知らない痛みを表してしまう。
より良く振る舞う知恵を君に教えたい
僕を愛さないで僕への愛を語る知恵を。
癇癪持ちの病人には、死が近づいても
健康になれると伝えるのが医者なのだ。
もし僕が絶望して怒り狂ってしまえば
僕は狂ったまま君の悪口を言うだろう。
今の世の中は酷く歪んでしまったから
狂った中傷も狂った耳が信じてしまう。
僕が狂って君が誤解されないためにも
奢った心が離れても目は合わせてくれ。
ああ!僕への声掛けでは誤魔化せない
僕の心への君の冷たい不正な仕打ちは。
せめて瞳ではなく舌で傷つけてほしい。
僕を殺すなら技術ではなく実力を使い
恋多き身の上を語っても構わないから、
大切な人よ、目だけは背けないでくれ。
なぜ策略が必要なのか、君の腕力には
僕の必死の防御ももたないというのに?
弁護させてくれ。ああ!愛しい人には
自分の可憐さが僕の敵だとわかるのだ。
だから彼女は僕の敵を僕の顔から背け
その危害を別のどこかへと向けたのだ。
それでもやめてくれ。死にかけの僕を
君の眼差しで殺し、痛みを除いてくれ。
彼女は真実の人だと僕の愛が誓うとき
嘘に気づきながらも彼女を信じる僕を
彼女は未熟な若者と思うかもしれない
世間の偽りの手管を知らない若者だと。
若く思われようという虚しい考えから
自分の盛りは過ぎたと知られていても
単純な僕は彼女の舌の偽りを信用する。
こうして単純な真実は挟み撃ちに遭う。
なぜ彼女は自分の不正を語らないのか?
なぜ僕は自分の老いを口にしないのか?
ああ!表面上の信用は恋の鉄則であり
老いた恋心は年齢を伏せるものなのだ。
僕が彼女に、彼女が僕に嘘をつくなら
嘘はお互いの欠点を誤魔化してくれる。
盲目の道化である恋よ、僕に何をした
瞳で見ているものが見えなくなるとは?
瞳は美を理解して見ているつもりだが
最低のものを最高だと見間違えている。
色目を使われ過ぎたために瞳が堕落し
誰もが停泊する港に錨を下ろすときに
なぜ恋は瞳の虚偽という鈎を鋳造して
心の判断力まで絡め取ろうとするのか?
なぜ僕の心は私有地だと思い込むのか
世間に開かれた共有地だと知りながら?
なぜ僕の瞳は目にしたものを否定して
麗しい真実に汚らしい化粧をするのか?
僕の心と瞳は今や真正なものを見誤り
恋という虚偽の疫病に身を委ねている。
君の魂が近づいてきた僕を怪しんだら
盲目の魂に「ウィル」だと誓ってくれ
魂は「望み」だと思い僕を通すだろう。
美しくて愛しい人への求愛が叶うのだ。
ウィルが君の愛の宝石箱を満たすのだ
望みのつまった箱に僕の望みをつめて。
豊富な経験があれば簡単に証明できる
多数の中なら一も無いに等しいことを。
数の多さに紛れて密かに通り抜けよう
君の蓄えの計算では僕も一だとしても。
僕を何ともみなさず、楽しむときには
ただ気持ち良い何かだとみなしてくれ。
君が僕の名を恋人として愛し続ければ
「ウィル」という名の僕も愛に与れる。
誰もが求める君にはお望みのウィルも
おまけのウィルも余計なウィルもいる。
僕は十二分に君を悩ませたのみならず
ここで君の甘い望みに足し合わされる。
果てしなく望む君の望みで許してくれ
君の望みに紛れようとする僕の望みを。
他人の望むことを慈悲深く眺めている
麗しい表情の輝きを僕は望めないのか?
海は水に満たされても雨を受け入れて
蓄えていても豊富に上乗せするものだ。
ならば望みに溢れた君も自分の望みに
僕の望みを加え、望みを増やしてくれ。
冷たさで美の嘆願者を殺すのはやめて
「ウィル」も「望み」に含めてほしい。