【記事について】
W.シェイクスピアの『ソネット集』に収められた154のソネット(14行の定型詩)を順番に訳していきます。翻訳は今回で3回目になります。
【詩について】
前回と同じく、今回の第47歌は美青年宛のソネット(1~126番)の一つです。この詩は第46歌の続きになっており、瞳と心の和解を描いています。瞳は姿を受け取り、心は愛を受け取るといっても、それぞれに苦しい空白の時は訪れます。そこで、青年が目の前におらず、青年と愛の時間を過ごすことのできない間、瞳と心は青年の美貌の記憶と青年との愛の想像とを交換して互いに慰め合うという幸せな同盟関係が生まれるのです。また、ここで歓待のイメージ(feast; banquet)が使われているのも興味深いです。
【翻訳】
僕の瞳と僕の心の間に同盟が組まれて
今ではお互いに良くするようになった。
瞳が君を一目見たいと飢えている間に
心は恋の溜め息で息を詰まらせている。
そこで瞳は愛する人の肖像で宴を開き
絵に描いた晩餐を心に振る舞ってやる。
すると、別の時には心が瞳を客として
愛の夢想の一部を分け与えるのである。
だから、君の肖像か僕の恋心があれば
君は遠くにいても僕の目の前に現れる。
君は僕の想いよりも先へ進めないから
僕は想いと、想いは君とずっと一緒だ。
想いが眠っても、視界に映る君の絵が
心を起こし、心と瞳を喜ばせるだろう。
【原文】(表記は現代英語)
Betwixt mine eye and heart a league is took,
And each doth good turns now unto the other:
When that mine eye is famish'd for a look,
Or heart in love with sighs himself doth smother,
With my love's picture then my eye doth feast,
And to the painted banquet bids my heart;
Another time mine eye is my heart's guest,
And in his thoughts of love doth share a part:
So, either by thy picture or my love,
Thy self away, art present still with me;
For thou not farther than my thoughts canst move,
And I am still with them, and they with thee;
Or, if they sleep, thy picture in my sight
Awakes my heart, to heart's and eyes' delight.