2018/03/22

2018年に読む英詩 ウォルター・ローリー卿(没後400年)

【記事について】
メモリアル・イヤーの詩人の英詩の翻訳。
※詩人はパブリック・ドメインの範囲で選んでいる。
今回は没後400年のシルヴェスター。


【詩人について】
◯ウォルター・ローリー卿
(Sir Walter Raleigh, 1554-1618)
・エリザベス女王の寵臣として知られる植民地開拓者。
 女王にちなんでヴァージニア植民地を命名したり、
 ジャガイモとタバコを紹介したりしている。
・エドマンド・スペンサーの友達。
 『妖精の女王』の出版を手伝ったという話もある。

【翻訳】
「嘘」
(The Lie)

行け、魂よ、体に宿る客よ、
報われない使い走りへ行け。
最善を冒すことを恐れるな、
真理がお前の身を保証する。
行け、私も死ぬ定めならば、
世間に嘘だと言い放つのだ。

宮廷に言うのだ、輝く姿は
腐った木が燃えるようだと。
教会に言うのだ、善を口で
説くのに、全く行わないと。
教会と宮廷が言い返すなら
それは嘘だと言い放つのだ。

王侯に告げよ、お前の生は
他人の行いを行う生であり、
贈り物がなければ愛されず、
策がなければ強さはないと。
王侯から言い返されたなら
それは嘘だと言い放つのだ。

身分の高い人々にも告げよ、
領地を一つ管理していても
その思いは野心に他ならず、
その行いはただの憎悪だと。
少しでも言い返されたなら
みんな嘘だと言い放つのだ。

武勇を示す人々にも告げよ、
それは物乞いの代償であり、
最大の犠牲を払っていても
称賛が欲しいだけなのだと。
彼らから言い返されたなら
みんな嘘だと言い放つのだ。

信心には献身が伴わないと、
恋心には情欲に過ぎないと、
時には運動を測るだけだと、
肉にはただの塵だと告げよ。
言い返されないよう願おう、
嘘だと言うことになるから。

老年には日々衰えていくと、
名誉には定義が変化すると、
美貌には間もなく枯れると、
寵愛にはすぐ鈍ると告げよ。
彼らから言い返されたのら
全員に嘘だと言い放つのだ。

機知には巧みな笑いを狙い、
争いばかり起こしていると、
知恵には賢い余りに自分も
もつれさせていると告げよ。
両者から言い返されたなら
率直に嘘だと言い放つのだ。

医術には度を越していると、
技術には見せかけだけだと、
慈善には他人事のようだと、
法には争いの元だと告げよ。
彼らから言い返されたなら
同じく嘘だと言い放つのだ。

運命には盲目に決定すると、
自然には衰弱を作り出すと、
友情には思いやりがないと、
正義には遅すぎると告げよ。
彼らから言い返されたなら
みんな嘘だと言い放つのだ。

学芸には良識を欠いたまま
ばらばらに憶測していると、
学派には深さを失ったまま
外見に拘っていると告げよ。
学芸や学派が言い返すなら
それは嘘だと言い放つのだ。

信仰には都市から逃げたと、
地方もまだ誤謬だらけだと、
人間も敬虔さを払い落とし
徳を好んでいないと告げよ。
彼らから言い返されたなら
必ずや嘘だと言い放つのだ。

私が命じたことをそのまま
お前が話し終えたとしよう。
嘘だと言い放ったがために
仕返しに刺し殺されるならーー
望むものに刺させるがいい。
魂を殺せる刃などないのだ。

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