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2019/04/06

翻訳:E. ディキンソン「林檎の樹へと雫がひとつ」(A Drop Fell on the Apple Tree)

林檎の樹へと雫がひとつ ―
屋根の上にも ― 雫がひとつ ―
軒にキスする半ダース ―
切妻屋根を笑わせた ―

いくつかの雫はせせらぎを支えに行き
そのせせらぎは海を支えに行った ―
私は一人で思い描く、雫がもしも真珠なら ―
どんなネックレスが出来るだろう ―

土くずの片付いた道が浮き上がり ―
鳥たちはおどけた歌を歌いだし ―
陽射しは帽子を放り投げ ―
茂みは - きらきらと滴って ―

そよ風は沈んだリュートを運び ―
喜びの歌に浸してやった ―
東の空は旗をひとつ掲げて
お祭り騒ぎに終わりを告げた ―

2017/10/23

翻訳:E・ディキンソン「風が草を揺さぶり始め」(The Wind Begun To Rock The Grass)

風が草を揺さぶり始め
恐ろしい音で唸る ― 
風は地を脅迫している――
空を脅迫している。

葉は樹の留め具を外し ― 
遥か遠くへ旅立つ
土は土を掬う手となり
それを道に投げる。

荷馬車が道を駆け抜け
雷もゆっくり急ぐ ― 
稲光は黄色い嘴を見せ
次に青い爪を出す。

鳥は巣に柵を突き刺し ― 
牛は小屋へ逃げる ― 
豪雨は一滴から始まり
溜めていた両手が

指を開いたかのように
水が空を打ち壊す
だが父の家は見逃され ― 
樹だけが裂かれた ― 

2016/10/16

翻訳:E.ディキンソン「お月様、お星様」(Ah, moon―and Star!)

ああ、お月様 ― お星様も!
あなたたちはとても遠い ―
だからひとりもいないはず
あなたたちより遠い人なんて ―
私がいたらどう思いますか
天穹のそばに ―
それか腕の中に ― なんてね。

借りられたらいいのに
雲雀の帽子を ―
シャモアの銀の靴を ―
羚羊の長靴下を ―
君の隣にいられたら ― 今夜!

ただ、お月様、お星様
あなたたちはとても遠い ―
だけどひとりだけ ― もっと遠い人 ―
彼は ― 天穹よりも大切で ― 私から ―
会いに行けないなんて!

2013/08/25

翻訳:E.ディキンソン「憎む時間はなかった」(I had not time to Hate)

憎む時間はなかった ―
だって
死は私の邪魔をして ―
生はそれほど十分には
なくて、私は
貫けなかったから ― 恨みを ―

愛する時間もなかった ―
けれども
努力することの中にはきっと ―
小さな愛の仕事もあるから ―
考えれば
私には十分大きいもの ― 

2013/08/23

翻訳:E.ディキンソン「愛は ― 生の前にいるもの ― 」(Love - is anterior to Life -)

愛は ― 生の前にいるもの ― 
死の ― 後ろにいるもの ― 
創造の始まりのものにして
地上を解き明かすもの ― 

翻訳:E.ディキンソン「一つの心が壊れないようにできるなら」(If I can stop one Heart from breaking)

一つの心が壊れないようにできるのなら
私が生きるのも無駄ではない
一つの生の痛みを楽にできるのなら
一つの苦しみを和らげられるのなら

一羽の気を失った駒鳥を助けて
巣の中へ戻してやれるのなら
私が生きるのも無駄ではない。

2013/08/20

翻訳:E.ディキンソン(If I shouldn't be alive)

駒鳥がやって来たとき
私が生きていなかったなら、
赤いクラバットの子にあげて、
追悼のパンくずを ―

深い眠りに落ちていて
ありがとうを言えなかったなら、
言おうとするのがわかるはず
この御影石の口で!

2013/08/18

翻訳:E.ディキンソン「喜びが ― 絵になるのは ― 」(Delight - becomes pictorial -)

喜びが ― 絵になるのは ―
痛みを通して見たとき ―
ずっと美しくなる ― できないから
手にすることが ―

山は ― 離れていると ―
琥珀に ― 横たわっている ―
近づくと ― 琥珀は揺らぐ ― 少し ―
それが ― 大空 ― 

2013/08/17

翻訳:E.ディキンソン(After a hundred years)

百年の後には
誰も知らない場所
苦悩は定めに従って
平安のごとく動かない

雑草が勝ち広がった
散歩する人がなぞった
昔に亡くなった者の
寂しい正書法を

夏の野を吹く風が
その道を思い出している ―
直感が拾い上げる鍵を
落としたのは記憶 ― 

2013/08/10

翻訳:E.ディキンソン(Yesterday is History)

昨日という日は歴史、
ずっと遠いもの ―
昨日という日は詩 ―
哲学というもの ―

昨日という日は神秘 ―
今日という日の中
私たちは賢く先を見るのに
二つの日を行きかうのだ

翻訳:E.ディキンソン「希望は、羽根のあるもの ― 」("Hope" is the thing with feathers-)

希望は、羽根のあるもの ―
魂を止まり木にして ―
言葉のない調べを歌う ―
決して止まない ― いつまでも ―

遥か美しく ― 風の中で ― 響くもの ―
痛ましい嵐でなければ ―
挫くことはできないはず ―
数多を温めた小さな鳥を ―

凍てついた土地に響いていた ―
見知らぬ海に響いていた ―
けれど ― 決して ― 苦しみ尽しても、
パンくずを求めなかった ― 私から。