【記事について】
W.シェイクスピアの『ソネット集』に収められた154のソネット(14行の定型詩)を順番に訳していきます。翻訳は今回で3回目になります。
【詩について】
前回と同じく、今回の第48歌は美青年宛のソネット(1~126番)の一つです。この詩は愛する青年を盗まれたくないという心情を歌った一篇です。宝石は錠をつけた宝石箱で守ることができますが、宝石以上に尊い青年はそうすることができません。そこで詩人は自分の心こそが安全に青年を隠せる収納ケースだと考えるのですが、それでも盗まれないか心配になるほど青年は美しい、とさらに捻りを加えています。
【翻訳】
遠出のときはどれほど警戒したことか、
がらくたにさえ堅実な錠前を取り付け
僕が使うまで使えないようにしてきた、
不正な手から守る堅実で確かな収納で!
僕の宝石をがらくたにしてしまう君は
最高の喜びにして今は最大の悲しみだ。
最も貴い君が唯一つの心配の種なのだ、
下らない盗人たちの狩り場にいる君が。
君を入れて施錠できる小箱が一つある。
それは、君がいないのにいると感じる
優しく閉ざされた僕の胸のことであり
そこは君が好きに出入りできる場所だ。
しかし、その君も盗まれないか心配だ、
誠実な人も盗みたくなる貴重品だから。
【原文】(表記は現代英語)
How careful was I when I took my way,
Each trifle under truest bars to thrust,
That to my use it might unused stay
From hands of falsehood, in sure wards of trust!
But thou, to whom my jewels trifles are,
Most worthy comfort, now my greatest grief,
Thou best of dearest, and mine only care,
Art left the prey of every vulgar thief.
Thee have I not locked up in any chest,
Save where thou art not, though I feel thou art,
Within the gentle closure of my breast,
From whence at pleasure thou mayst come and part;
And even thence thou wilt be stol'n I fear,
For truth proves thievish for a prize so dear.