2017/06/11

シェイクスピア『ソネット集』 第145歌

恋がその手で作り、彼女に与えた唇が
息に乗せて「嫌い」という音を発した
彼女のために思い悩んできた僕の方へ。

だが僕の痛ましい様子を目にしたとき
憐れみが彼女の心へと差し込んできて
甘く囁くはずの舌を叱りつけてくれた
それまで優しい運命を語ってきた舌を。
そして改めて挨拶の仕方を教えたのだ。

彼女が「嫌い」の後に言葉を加えると
その言葉は優しい昼のように夜に続き
昼に追われた夜はまるで悪魔のように
天国から地獄へと追い払われていった。

「嫌い」と憎しげに言い放った彼女は
「君の事じゃないよ」と僕の命を救う。