2017/06/10

シェイクスピア『ソネット集』 第143歌

ご覧、家政に気を遣う主婦は駆け足で
脱走した一羽の鶏を捕まえるためなら
赤子を降ろして、全速力で出ていって
鶏を引き止めるために追いかけていく。

放置された子供はその主婦の後を追い
捕まえようと泣きつくが、一方彼女は
目の前を飛び回る鶏を追うので忙しく
可哀想な赤子の不満は気にも留めない。

君もまた飛び回る人を走って追いかけ
君の赤子である僕は遠ざかる君を追う。
望むものを手に入れたら、帰ってきて
母親の役を演じ、キスと優しさをくれ。

君が「ウィル」を得られるよう祈ろう
泣き叫ぶ僕を宥めに戻ってくれるなら。