2017/12/31

A・テニスン『イン・メモリアム』104歌「鳴り響け、猛る鐘よ」

鳴り響け、猛る鐘よ、あの猛る空に、
 逃げる雲と凍てつく光に向かって。
 今宵、この一年は息絶えるだろう。
鳴り響け、猛る鐘よ、送り出すのだ。

鳴り響け、旧年を払え、新年を招け、
 鳴り響け、幸せの鐘よ、雪景色に。
 去りゆくこの一年を送り出すのだ。
鳴り響け、偽物を払え、本物を招け。

鳴り響け、心を蝕む悲哀を追い払え、
 悲しみの種を振り返ることはない。
 鳴り響け、貧富の諍いを追い払え、
鳴り響け、全人類の修繕を招くのだ。

鳴り響け、往生際の悪い主義主張と
 古臭い党派争いの数々を追い払え。
 鳴り響け、今よりも尊い生き方を、
美しい作法と清らかな律法を迎えよ。

鳴り響け、時代の貧困と不安と罪を、
 不信が生み出す冷たさを追い払え。
 鳴り響け、私の哀歌など追い払え、
鳴り響け、朗々とした詩人を迎えよ。

鳴り響け、身分や血筋に拘る虚栄と
 市民同士の傷つけ合いを追い払え。
 鳴り響け、真と義への愛を迎えよ、
鳴り響け、善への普遍の愛を迎えよ。

鳴り響け、姿の老いた醜い病を払え。
 鳴り響け、行き詰まる強欲を払え。
 鳴り響け、古びた千の戦争を払え。
鳴り響け、千年続く平和を招くのだ。

鳴り響け、勇敢な人を、自由な人を、
 今より広い心と優しい手を迎えよ。
 鳴り響け、地上の暗闇を追い払え、
鳴り響け、来るべき救い主を迎えよ。


Alfred Tennyson. "Ring Out, Wild Bells."
in In Memoriam (1850).