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2018/06/13

D・ロセッティ『命の棲む家』「愛と希望」

第43歌 愛と希望 Love and Hope

愛と希望に祝福を。年月は枯れ果て、
僕らを置いて凍える終末の方へ巡る。
僕らは落ち葉の積もる中で抱き合い、
跪いたまま泣き続け、涙を枯らした。
しかしご覧!遂に一時、春の相棒が
新緑の裏道から僕らへと笛を奏でる。
死者は年月と涙だけだ――愛と希望、
真実の魂に祝福を、僕らのいる証を。

心を心に留め、この現在に尋ねるな、
「死後、本当に僕らの心は目覚めて
愛の金色の頭部を拝めるのだろうか、
不滅の地の唯一の陽光を」などとは。
飾りのない夜の望遠鏡で見つけよう、
蔑まれ尽くした希望の幻想の眼光を。

Dante Rossetti. "Love and Hope"
in The House of Life (1898).

2018/06/03

D・ロセッティ『命の棲む家』「希望に追いついて」

第42歌 希望に追いついて

おお、希望よ、灰色の衣装を脱いで
見違えるようだ。今、この隔たりが
やっと埋まった。そして、緑を纏い、
お前は昔の頃と同じ姿で立っている。
ああ、神様!鈍い失望さえなければ、
僕らの歩みも初めからこの道の中で
こうやって入り混じり、僕らの影も
雑木や水路の上で重なっていたのに。

おお、希望よ、その瞳は命ある愛だ、
まさに彼女の瞳――愛は希望なのだ!
寄り添ってくれ。沈んでいく太陽は
僕らの足を温め、髪を金色に染める。
おお、彼女とお前は声も名も一つだ!
ああ、そばにいてくれ。太陽が沈む!

Dante Rossetti. "Through Death to Love"
in The House of Life (1898).

2018/05/28

D・ロセッティ『命の棲む家』「死の先の愛へ」

第41歌 死の先の愛へ
Through Death to Love

例えば、月を背負う雲が逃げていく、
冬に噛まれた荒野を吹き払う風から――
例えば、変幻自在の水流が巡りゆく、
夜の満ち潮の中で――恐れが重なる
喉のかすれた炎と歯切れの悪い海に――
同じく、僕らの息で曇ったガラスに
僕らの心は粗い像を見て取る、死と
影と群れが永遠を縁取っていく姿を。

しかし、死の迫りくる影を横切って
ある力が飛び、流れる風や飛ぶ鳩に
勝る柔らかさで地に降り、巣を覆う。
教えてくれ、心よ――天使を招く扉、
翼に払われた脱穀場の前にいる客は
お前と同じ炎の翼を持つ愛の従者か。

Dante Rossetti. "Through Death to Love"
in The House of Life (1898).

2018/05/27

D・ロセッティ『命の棲む家』「切り離された分身」

第40歌 切り離された分身(Severed Selves)

遠く隔てられている二人分の静寂も、
一緒にいれば恋する歌声に辿り着く。
一緒なら恋を喜ぶ二人分の眼差しが、
今は暗い森に遮られた星々のようだ。
触れるだけで心が安らいでいく手も、
心という神殿に聖火を灯し合う胸も、
逢瀬に重なれば一体となれるのだが、
二人の魂の岸を海が隔て、波が嘲る――

これが現在の僕らだ。ああ!希望は
本当に再会の一時を予見できるのか、
恋の暗い流れが再びきらめく一時を――
何と遅く来て、何と早く去る一時よ――
咲いては枯れ、葉だけを残す一時よ、
散る花のように脆く衰えていく夢よ。

Dante Rossetti. "Severed Selves"
in The House of Life (1898).

2018/05/25

D・ロセッティ『命の棲む家』「眠らずの夢」

第39歌 眠らずの夢(Sleepless Dreams)

広がる闇に囲まれても瞬く星が一つ、
ああ、青春の夜のように嬉しい夜よ!
君の魔法に囚われた僕の鼓動はなぜ
早まっていくのか。金の囲いの中で
震えを増していく花嫁の指のようだ。
枕へそよ風を送るのは誰の翼だろう。
眠りはなぜ、喜びと悲しみに揺られ、
そっと近寄り、遠くから見守るのか。

いや、緑の深い夜よ!愛は君の中で
木立になったのか。その影と囁きは
人の瞳には休息、耳には音楽となる。
ああ、孤独な夜よ!僕を忘れたかい、
嘲りの仮面をぶら下げている茂みよ、
徒らに温かい涙で濡れている茂みよ。

Dante Rossetti. "The Morrow's Message"
in The House of Life (1898).

2018/05/24

D・ロセッティ『命の棲む家』「朝の知らせ」

第38歌 朝の知らせ

「幽霊よ、君は今日という名前なのか?――
昨日の息子よ、随分と落ちぶれた顔だ!
明日は君より青ざめているのだろうか。」
話しかけると、静寂は答えた。「ああ、
私たちの子孫の姿はみな白く悲しげで、
彼らが事前に立てておく哀れな誓いは
まるで、芽吹いた枝に残った古い葉や、
朝日に片付けられる夜の残滓のようだ。」

僕は声を上げた。「数々の呪いの母よ、
おお、大地よ、塵の寝床へ僕を迎えよ!」
だが、沈黙は震えながら言葉を継いだ。
「ほら!恋に従う麗人が君へ一言声を――
ああ、もう一言――君の命に日が昇る。
さらにもう一言――死の影が息絶えた。」

Dante Rossetti. "The Morrow's Message"
in The House of Life (1898).

2018/05/18

D・ロセッティ『命の棲む家』「恋という月」

第37歌 恋という月(Love-moon)

「遠い月日に覆われたあの死者の顔は、
 あの頃は命の全てだったあの人の顔は、
 今では思い出の波にすら宿っていない
君の魂を涙の水飛沫で濡らす波にすらーー
君は、彼女の瞳を見つめているうちに、
 今にも心を喜ばせながら見て取るのだ、
 恋に媚薬入りの目薬を注がれた眼球で、
彼女の瞳が映す埋もれた誓いの面影を。」

「違うのです、情深き愛、愛深き情よ!
 ご存知のはずです、私はこの双子から
あなたの呼び鈴の声を二度聴きました。
 ご主人様、死は露わにしていませんか、
高ぶった心変わりが称えているものを、
私の恋する魂を照らす、恋という月を。」

Dante Rossetti. "Life-in-love"
in The House of Life (1898).

◯翻訳メモ
・恋人の死後に新しい恋に落ちた人物をめぐるやり取り。
 君は昔の恋人に重ねて他人を愛するのか、と恋は聞く。
 私は答える、「いいえ、この恋は未練ではありません。
 月の満ち欠けのように恋自体が終わらないのです」と。
 (相変わらず難しい詩人だが、このように取ってみた。)
・calminant changesは高ぶる恋と天高い月をかけたか。
・euphrasyは小米草のことであり、eyebrightが別名。
 これはその名の通り目薬に使われていた花だそうだ。
 和名で言っても通じないので、ただ「目薬」とした。

2018/04/25

D・ロセッティ『命の棲む家』「愛に宿る命」

第36歌 愛に宿る命

君の命が宿るのは君の体の中ではなく
 この麗人の持つ唇、手、瞳の中なのだ。
 君の命はそこから吹き込まれて伝わる、
悲哀の従者や死の奴隷に過ぎない体に。
彼女がいないときの自分を見てごらん。
 空しい追憶や寂しい夢想を宿していた
 あの死者のため息を思い出してごらん、
過ぎた時とあり得た時を思うため息を。

それほどの命がただ一房の髪にも宿る。
 一房でも手元にあれば、愛は描き出す
 ずっと昔の胸の鼓動や炎の熱気さえも。
それほどの命が人知れぬ所にいるのだ、
変わらない夜に囲まれた変化の渦中で
光を失わない死んだ金色の髪の中にも。

Dante Rossetti. "Life-in-love"
in The House of Life (1898).

2018/04/02

D・ロセッティ『命の棲む家』「灯火の神殿」

第35歌 灯火の神殿

時には君の欠点を知るのも厭わないし、
 欠点があっても僕は君を愛せるだろう。
 僕らの主である愛ならば、どうやって
君を崇める完璧な賛辞を削るだろうか。
何てことだ!愛は僕の心にある倉庫を
 人から見て無価値なものに変えたのだ。
 するとそこに灯る君の炎は魅力を増す、
玄武岩の奥のクリソプレーズのように。

卑下していなくても、僕は愛の神殿で
 愛の顔の放つ光線に包まれてしまうと、
 君の心というきらめく宝石を仕舞って
無粋な箱で輝いてもらおうとするのだ。
ご覧!君の見事さへの称賛になるなら
僕の心はこの惨めさも誇りとするのだ。

翻訳メモ
・君の欠点を愛はどうするのだろうか。
 僕の卑しさでごまかしてしまうのだ。
 岩に埋まった宝石という比喩が良い。

Dante Rossetti. "The Lamp's Shrine"
in The House of Life (1898).

2018/03/18

D・ロセッティ『命の棲む家』「暗闇のガラス」

第34歌 暗闇のガラス

君への愛には、僕も知らない先がある。
 僕はどうやってここまで来たのだろう、
 明日の持参金を昨日で測れないままに。
誕生や死、暗闇を纏った全ての名前が
騒がしい海に晒された扉や窓のように
 僕の耳を音で塞ぎ、眼前を飛沫で覆う。
 僕の感覚は愛をーー永遠の最後の中継、
終極の前哨地を貫くことができるのか?

ご覧!僕は愛にとって何なのだろうか?
 万物の主たる愛が砂浜で拾った囁く貝ーー
 その手の中で守られた小さな心の火だ。
だが愛は君の瞳からも僕に伝えている、
根源の明瞭な呼び声と多様な感触とを、
 時に囲われた命が必ず理解するものを。

Dante Rossetti. "The Dark Glass"
in The House of Life (1898).

翻訳メモ
・暗闇のガラス(dark glass)は難解。
 「心の火」をヒントに瞳と解釈した。
 瞳は奥が暗闇に隠されたガラス玉だ。
 「ご覧」は「目を見て」ということ。
 自分の目を見てもらうと目が合う。
 相手の目に話が移る逆説の「だが」。
・前半部の比喩は情景だけはわかった。
 だけど例えの仕組みがわからない。
 dark nameは何を指しているのか…。

2018/03/01

D・ロセッティ『命の棲む家』「勝者ウェヌス」

第33歌 勝者ウェヌス

ユノは君を上回る容姿の持ち主なのか?
 君は麗人の間に君臨する気品の女王だ――
 パラスは勝てるのか、心穏やかな顔を
詩集に寄せ、金の髪の影を落とす君に?
君が天来の美貌でウェヌスに劣るのか?
 君の微笑みは、愛に波打つ忘我の海を
 目配せと混ざり合いながら漂っていく、
夜の波のような美しい声で囁きながら。

三位一体の神聖な魅力に胸を打たれて
 僕は尋ねる。「どの女神が求めるのか、
君にしか与えられない戦利品を?」と。
 愛は何よりも甘美な君の名を低く告げ、
勝者の女神たるウェヌスが僕の心へと
約束の報酬としてヘレネを連れてくる。

Dante Rossetti. "Venus Vectrix"
in The House of Life (1898).

2018/02/14

D・ロセッティ『命の棲む家』「平等の契り」

第32歌 平等の契り

僕らの愛を同じ定規で測らないでくれ。
 僕は君を愛するほど愛されるだろうか――
 僕には気品も喜びの種もなく、絶対に
君の玉座に相応しい賜物を欠いている――
君は人々の心の特別な玉座に腰をかけ
 木々から選び抜かれた花々の冠を戴く。
 君一人の頭のために、愛の神が命じて
全ての美と神秘を編み込ませた花冠だ。

だが、君の瞳と唇はそれを優しく叱る――
 (君は言う)「私の愛は小さくなるね。
  私の愛が平等じゃないと疑うんだから。」
待ってくれ!僕の心の限界の代わりに
 君の心の超越から愛の価値を見るなら――
  君の愛は僕の愛の千倍以上になるのだ。

Dante Rossetti. "Equal Troth"
in The House of Life (1898).

2018/02/05

D・ロセッティ『命の棲む家』「彼女の賜物」

第31歌 彼女の賜物

王妃たちが持参金に携えるような気品、
 木々のなす光景のような素朴な美しさ。
 一瞥を投げる瞳は、空を湛える水面か、
森の暗がりに灯る風信子の光のようだ。
胸を震わせ、心を奪うような頬の白さ。
 情熱に燃えた唇の形も仄めかしている
 口に秘めた全ての音楽と全ての静寂を。
彼女の色の濃い金髪は、最高の宝冠だ。
滑らかな首筋は愛の神殿の円柱となり、
 聖域に駆け込んだ心が縋る場所となる。
 両手はいつも愛の神の意に沿って働き
両足はそのお告げに応じてそっと動く――
だが、この彼女の賜物を数えるよりも、
魂よ、彼女の名を囁く方が豊かなのだ。

Dante Rossetti. "Her Gifts"
in The House of Life (1898).

2018/01/29

D・ロセッティ『命の棲む家』「最後の火」

第30歌 最後の火
恋人よ、君と僕の胸中に、夏の夕べは、
 万物を従えた絶景はどう輝くのだろう?
 恍惚とした今日の太陽は西の空を埋め、
その光は消えかけの火のように美しい。
君の胸の高鳴りも、今は少し穏やかだ。
 まるで愛の港に着いたように、恋心が
 想いを降ろすと、僕らも眠りに落ちて、
お互いの夢が至福の記憶を連れてくる。

冬が仕舞い込んでしまう日々の多くは
 太陽が表に出ず、僅かに日が差しても
 裸の木たちに積もった雪は払われない。
だが、この一日だけは夏の情人となり、
不朽の核まで太陽の色に染まっている
 愛の甘い幸福と心を満たす安心の色に。

Dante Rossetti. "Last Fire"
in The House of Life (1898).

2018/01/17

D・ロセッティ『命の棲む家』「月と星」

第29歌 月と星

ご麗人、その愛らしさには感謝しよう。
 僕の愛しい人の愛らしさが増すからだ。
 歓喜の眼差しで、祝意と善意をもって
賛辞を捧げよう。美しく紡がれた衣装、
すなわちあなたの繊細な生命を頼りに
 愛は苦労して女王の国を見積もるのだ。
 曰く、「見よ、何と極まった美しさだ。
だが、最も美しい信女に過ぎないのだ」

ご麗人、彼女とあなたを並べてみよう。
 女王を囲む夜の美しい炎たちの中でも
月のすぐ近くを漂う強気の星のように――
 彼女の月光に重なったあなたの光線は
 跡形もなく消え、その光に紛れていく。
麗人よ、栄光は彼女だけのものなのだ。

Dante Rossetti. "Moonstar"
in The House of Life (1898).

2018/01/15

D・ロセッティ『命の棲む家』「魂の光」

第28歌 魂の光

君ほどに愛される人はいるのだろうか、
 君を愛し尽くせる愛はあるのだろうか?
 歓楽の限りを尽くした後なのに、まだ――
まるで鬱蒼とした並木道の果てにある
昼の優しい魅惑のように――君の瞳の
 奥深くにも飢えを増した興奮が見える――
 愛が魂の籾殻を払う手で自らの内奥の
光と雫の弧を蒸留して得た火のようだ。

例えば、日の出を見た旅人は歓喜して
 仄かな暖かさに舞い上がり、星の潮は
 新生の奇跡を運び、薄明るく澄み渡る
一日の始まりには瑞々しい陶酔が湧く――
 君の瞳と声の奥にある魂も、僕の魂を
 限りない愛の多彩な光で震わせるのだ。

Dante Rossetti. "Soul-Light"
in The House of Life (1898).

【翻訳メモ】
・鬱蒼とした並木道(deep avenue)
 立派な木が並んだトンネルのような道。
 画像はtree avenueとかで検索できます。
・光と雫の弧(arc of light and dew)
 この詩の一番の難読箇所だと思います。
 僕は露の面に反射する光と取りました。
 これはちょうど瞳の光と同じものです。
 

2018/01/08

D・ロセッティ『命の棲む家』「天を巡る心」

第27歌 天を巡る心

時々、君が君という一人の人ではなく
 全ての存在の意味に見えることがある。
 息も止まる絶景が遥かな前触れとなり
和やかに口を噤んだ見事な太陽が立つ。
落ち着いた唇は目に映る音楽の調べだ。
 瞳が魂の日の出を閉ざす閂を降ろせば
 奥深くに燃える神託の炎が二つ見える――
蒔かれ刈られる全ての生命を表す心が。

これこそ愛だ。君の名は愛ではないか?
 間違いない、愛の神が君の手を借りて
 夜の曖昧な作為をなす雲の群れを裂き、
雲を振り落とし、君の瞳を高みに据え、
ただ、挑戦の花や手袋を投げるように
 君に抗う世界へ微笑みの杭を打つのだ。

Dante Rossetti. "Heart's Compass"
in The House of Life (1898).

2017/12/20

D・ロセッティ『命の棲む家』「歓喜の最中にて」

第26歌 歓喜の最中にて

愛らしく愛しい君よ、僕の愛する君よ。
 君のキスは一度目のままだ。眼差しは
 今も新しい日の出となり、恋の世界の
夜明けを灯している。声はどこまでも
隠れ家の奥に憩う鳩の声色と重なって
 魂にそっと寄り添う手のひらのようだ。
 そして君の手はまるで甘い声のように
疲れ果てた表情を捕えて、変えるのだ――

君の言葉に返せる言葉が――君の瞳に
 応じられる瞳があるのか。今も球面が
 崇拝中の僕の顔を取り込み、僕の像は
奥底から差す天の光輪に囲われている。
キスや抱擁で僕の心の奥も伝わるのか、
ああ、愛らしくて愛しい、愛する人よ。

Dante Rossetti. "Mid-Rapture"
in The House of Life (1898).

2017/12/17

D・ロセッティ『命の棲む家』「時の翼」

第25歌 時の翼

僕らが会えるまでに流れる一時一時は
 鳥のように遠くから悠然と飛んでくる
 葉をさらさら鳴らす僕の魂の隠れ家へ――
近づく歌にざわめきを増す茂みの奥へ。
逢瀬の時にははっきりした言葉になる
 時が歌う一音一音が、愛の舌を借りて。
 だが愛の知る通り、この美しい調べは
耳を喜びで満たした後に奪われるのだ。

終わりの時にはどうなってしまうのか?
 彼女のために翼も訪れず、歌も流れず
 葉を落とす自分の人生の周りを歩けば
藪に散って血に濡れた羽根が目に入る。
遠くの彼女に思いを馳せながら、瞳は
音のない枝から翼のない空を見るのだ。

Dante Rossetti. "Winged Hours"
in The House of Life (1898).

2017/12/04

D・ロセッティ『命の棲む家』「青春謳歌」

第24歌 青春謳歌

私たちが死者に捧げる悲哀も、子供の
 心ではほとんど感じることができない
 子供の澄んだ精神は思い悩まないのだ
彼らが死ぬ番で、自分が生きる番でも。
翼を授かった新しい恋も微笑みながら
 渦巻く羽毛伝いに日の出の風を浴びて
 前へ胸を張り、後ろには目もくれない
儚い昔の恋を覆っている夜の破滅には。

思い返す一時一時に変化があるものだ
 草原に咲く最後の九輪桜を目にすると
 同じ日に咲いた最初の雛芥子も見える。
あわれなるかな、刻一刻と進む変化よ!
華やぐ青春の手から落ちた全ての恋よ
 祈りを数える数珠繋ぎのビーズたちよ!

Dante Rossetti. "Pride Of Youth"
in The House of Life (1898).

翻訳メモ
最後のbeads of a told rosaryは特殊な表現。
祈祷の補助でロザリオを数えることがある。
ビーズを辿りながら祈りを重ねていく感じ。
tell one's beadsで「祈る」という慣用句に。
ただし、ここは慣用的というより視覚的だ。
(前へ進む青春とビーズ手繰りの比喩。)