2018/04/25

D・ロセッティ『命の棲む家』「愛に宿る命」

第36歌 愛に宿る命

君の命が宿るのは君の体の中ではなく
 この麗人の持つ唇、手、瞳の中なのだ。
 君の命はそこから吹き込まれて伝わる、
悲哀の従者や死の奴隷に過ぎない体に。
彼女がいないときの自分を見てごらん。
 空しい追憶や寂しい夢想を宿していた
 あの死者のため息を思い出してごらん、
過ぎた時とあり得た時を思うため息を。

それほどの命がただ一房の髪にも宿る。
 一房でも手元にあれば、愛は描き出す
 ずっと昔の胸の鼓動や炎の熱気さえも。
それほどの命が人知れぬ所にいるのだ、
変わらない夜に囲まれた変化の渦中で
光を失わない死んだ金色の髪の中にも。

Dante Rossetti. "Life-in-love"
in The House of Life (1898).