第36歌 愛に宿る命
君の命が宿るのは君の体の中ではなく
この麗人の持つ唇、手、瞳の中なのだ。
君の命はそこから吹き込まれて伝わる、
悲哀の従者や死の奴隷に過ぎない体に。
彼女がいないときの自分を見てごらん。
空しい追憶や寂しい夢想を宿していた
あの死者のため息を思い出してごらん、
過ぎた時とあり得た時を思うため息を。
それほどの命がただ一房の髪にも宿る。
一房でも手元にあれば、愛は描き出す
ずっと昔の胸の鼓動や炎の熱気さえも。
それほどの命が人知れぬ所にいるのだ、
変わらない夜に囲まれた変化の渦中で
光を失わない死んだ金色の髪の中にも。
Dante Rossetti. "Life-in-love"
in The House of Life (1898).