2019/07/11

新訳 W.シェイクスピア『ソネット集』 No. 54

【記事について】
W.シェイクスピアの『ソネット集』に収められた154のソネット(14行の定型詩)を順番に訳していきます。翻訳は今回で3回目になります。

【詩について】
前回と同じく、今回の第54歌は美青年宛のソネット(1~126番)の一つです。この詩では序盤のソネットと同じイメージとテーマが復活しており、薔薇の姿・香り・蒸留液を青年の姿・真実・詩に対応させながら、美しい青春を詩で保存するというテーマが歌われています。この詩はほとんどの行を薔薇のイメージに割いているため、このテーマを扱ったものの中でも特に統一性があり、その連想に具体的な深みが与えられている一本になっていると思います。

【翻訳】
ああ!美しい姿も美しさを増すだろう
真実が芳しい装飾を添えてくれるなら。
麗しい姿の薔薇もさらに麗しく感じる
芳しい香りがその奥に生きているなら。
野薔薇も隅々まで深い色に染まるのは
香りながら色づく薔薇と変わりはなく
棘を纏い、艶かしく戯れるのも同じだ、
夏の息吹に蕾の仮面を外した頃だけは。
しかし、容姿だけが取り柄の野薔薇は
求愛されずに生き、尊敬されずに枯れ
一人で死ぬ。芳しい薔薇の方は違って
芳しい死から殊に芳しい香水が出来る。
君も同じだ。君の美しく素敵な青春が
凋むとき、僕の詩は真実を蒸留しよう。

【原文】(表記は現代英語)
O! how much more doth beauty beauteous seem
By that sweet ornament which truth doth give.
The rose looks fair, but fairer we it deem
For that sweet odour, which doth in it live.
The canker blooms have full as deep a dye
As the perfumed tincture of the roses,
Hang on such thorns, and play as wantonly
When summer's breath their masked buds discloses:
But, for their virtue only is their show,
They live unwoo'd, and unrespected fade;
Die to themselves. Sweet roses do not so;
Of their sweet deaths are sweetest odours made:
   And so of you, beauteous and lovely youth,
   When that shall vade, my verse distills your truth.