2019/04/30

新訳 W.シェイクスピア『ソネット集』 No. 42

【記事について】
W.シェイクスピア『ソネット集』に収められた154のソネット(14行の定型詩)を順番に訳していきます。翻訳は今回で3回目になります。

【詩について】
前回と同じく、今回の第42歌は美青年宛のソネット(1~126番)の一つです。この詩も引き続いて「詩人の恋人を奪った青年」というテーマを歌っています。青年を失い、恋人を失った詩人は「二人は自分の愛したものを愛したために過ちを犯した」と解釈します。詩人はそうして自分を責めながら、「自分と青年が一体であるのだから、自分は恋人とまだ愛し合っているのだ」という詭弁で心を慰めるのです。

【翻訳】
君が彼女を選んでも悲しくはならない、
僕は彼女を大切に愛したと言えるから。
彼女が君を選んだことにこそ涙が出る、
愛の喪失にはより迫るものがあるから。
恋に落ちた罪人たちよ、汝らを赦そう。
君は僕が愛するのを見て彼女を愛した。
彼女が僕を傷つけたことも僕のせいだ、
彼女は僕の友にならと身を許したのだ。
僕の失った君は僕の恋人のものとなり、
僕の失った彼女は僕の友と出会うのだ。
二人が出会えば、僕はその二人を失い
二人は僕のせいで僕を十字架にかける。
しかし、幸いにも友と僕は一体だから、
甘い詭弁よ!彼女は僕一人に恋をする。

【原文】(表記は現代英語)
That thou hast her it is not all my grief,
And yet it may be said I loved her dearly;
That she hath thee is of my wailing chief,
A loss in love that touches me more nearly.
Loving offenders thus I will excuse ye:
Thou dost love her, because thou know'st I love her;
And for my sake even so doth she abuse me,
Suffering my friend for my sake to approve her.
If I lose thee, my loss is my love's gain,
And losing her, my friend hath found that loss;
Both find each other, and I lose both twain,
And both for my sake lay on me this cross:
   But here's the joy; my friend and I are one;
   Sweet flattery! then she loves but me alone.