【記事について】
W.シェイクスピアの『ソネット集』に収められた154のソネット(14行の定型詩)を順番に訳していきます。翻訳は今回で3回目になります。
【詩について】
前回と同じく、今回の第41歌は美青年宛のソネット(1~126番)の一つです。この詩は前回と同じく「詩人の恋人を奪った青年」というテーマを別の視点から歌ったものです。詩人は、青年が誘惑されて不義を犯すのは青年の美しさと優しさのためだが、そのままでは詩人の恋人の不義と青年自身の不義の責任を負うことになるのだと優しく諭します。こうしてみると、恋人がいながら青年に夢中な詩人自身のモラルは不問なんでしょうか。笑
【翻訳】
自由の身は他愛のない過ちを犯させる、
僕が君の心の中にいないときがあると。
それも君の美しさや若さによく似合う。
誘惑も君の後を追いかけ続けるはずだ。
君は奥ゆかしいから落とされてしまい
君は美しいから攻められてしまうのだ。
女から生まれた息子なら、女の求愛を
自分から惚れるまで断るものだろうか。
いやはや!僕の居場所から手を引いて
君の美しさと迷える若さを叱ってくれ。
その二つに耽るなら、君はその果てに
二重の信義を裏切ることになるだろう、
君の美しさに誘惑された彼女の不義と
君の美しさで僕を欺いた君の不義とで。
【原文】(表記は現代英語)
Those pretty wrongs that liberty commits,
When I am sometime absent from thy heart,
Thy beauty, and thy years full well befits,
For still temptation follows where thou art.
Gentle thou art, and therefore to be won,
Beauteous thou art, therefore to be assailed;
And when a woman woos, what woman's son
Will sourly leave her till he have prevailed?
Ay me! but yet thou mightst my seat forbear,
And chide thy beauty and thy straying youth,
Who lead thee in their riot even there
Where thou art forced to break a twofold truth:
Hers by thy beauty tempting her to thee,
Thine by thy beauty being false to me.