2019/04/14

映画感想:ヌーヴェル・ヴァーグ 観る予定の30本

【記事について】
ヌーヴェル・ヴァーグについてのメモと視聴予定作品。

【ヌーヴェル・ヴァーグについて】
 今回観ていきたいな、と思っている映画は戦後世代の監督が撮ったフランス映画。具体的には、1958年から1970年までの間に公開された作品で、観る予定の30本は下にリストアップしておいた。この時期のフランスでは、「ヌーヴェル・ヴァーグ」(La nouvelle vague)というスタイルの映画が盛り上がっていて、今回のリストにも関係する作品が結構入っている。せっかくなので、今回はヌーヴェル・ヴァーグについて簡単にまとめておこうと思う。(※内容の正しさは保証しないよ。笑)
 ヌーヴェル・ヴァーグは戦後フランス映画の代名詞のようなスタイルで、「大手の映画制作に対抗して自由な映画制作をしよう」という精神が基本になっている。ヌーヴェル・ヴァーグを支えた若い監督たちの特徴は「映画はお約束に沿った娯楽じゃなくて、監督の思想の表現だ」という考え方にある。この辺りの自己意識の強さは、活発な映画批評にも表れていて、ただ映画を作るだけじゃなく、映画雑誌に評論を載せたり、映画の中で他の映画に言及したりしているのもなかなかユニークなところだ。それから、当然のことだけれど、大手の商業性を離れようとすると自腹で映画を作ることになる。ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちも、役者やスタッフを身内で補ったり、撮影機材を間に合わせのもので作ったりしながら低予算の撮影をこなしていた。ただ、彼らの特徴は、予算をあまり使わない前衛的な工夫として、即興のやり取りや場面の飛躍、画面上のトリックなんかを用いたところにある。この手の工夫には観客の想定を裏切ろうという雰囲気が割とあるから、機知が効いていると思う人もいれば、挑発的で苦手という人もいるだろう。
 最後に、ヌーヴェル・ヴァーグとその周辺の人物をまとめておこう。ヌーヴェル・ヴァーグの監督には、(映画雑誌を支えるなど)グループとしてはっきり群れていた人たちと、どちらかというとボヘミアンな感じでふらふらしていた人たちがいて、前者は右岸派、後者は左岸派と呼ばれている。右岸派はF.トリュフォーJ-L.ゴダールJ.リヴェットC.シャブロルE.ロメールの五人で、彼らは当時から右岸派とそれ以外という境界を意識していたみたいだ。ただ、このグループ意識は決してエリート意識ではなくて、「他の監督も大事なんだけれど、ヌーヴェル・ヴァーグの運動に責任のある集団がいるとしたら、雑誌作って議論している自分たちだよね」くらいのノリだったようだ。他方で、左岸派は後々に映画批評を通して特定されていって、今ではだいたいA.ヴァルダA.レネC.マルケルJ.ドゥミ辺りがそう呼ばれている。ちなみに、フランス戦後世代の監督はここに挙げた人たちでほとんどなんだけれど、右岸派とも左岸派とも呼ばれていない人物、つまりヌーヴェル・ヴァーグ以外の監督としてL.マルがいることは覚えておきたい。
 とりあえず、これから観ていく映画はこの監督たちの作品だ。繰り返しになるけれど、そのほとんどがヌーヴェル・ヴァーグに何かしらの形で関わった監督だから、このリストにもヌーヴェル・ヴァーグ映画と言われるものがたくさん入っている。けれど、今後の記事では映画史や映画分析みたいなことは考えないで、一つ一つの作品としてゆるーく観ていけたらな、と思っている。

【見る予定のリスト】
  1. シャブロル『美しきセルジュ』(1958)
  2. マル『死刑台のエレベーター』(1958)
  3. トリュフォー『大人は分かってくれない』(1959)
  4. シャブロル『いとこ同志』(1959)
  5. レネ『24時間の情事』(1959)
  6. トリュフォー『ピアニストを撃て』(1960)
  7. ゴダール『勝手にしやがれ』(1960)
  8. リヴェット『パリはわれらのもの』(1960)
  9. シャブロル『気のいい女たち』(1960)
  10. マル『地下鉄のザジ』(1960)
  11. レネ『去年マリエンバートで』(1961)
  12. ドゥミ『ローラ』(1961)
  13. トリュフォー『突然炎のごとく』(1962)
  14. ゴダール『女と男のいる舗道』(1962)
  15. ヴァルダ『幸福』(1962)
  16. ヴァルダ『5時から7時までのクレオ』(1962)
  17. マルケル『ラ・ジュテ』(1962)
  18. マルケル『美しき五月』(1962)
  19. ゴダール『軽蔑』(1963)
  20. ゴダール『はなればなれに』(1964)
  21. ドゥミ『シェルブールの雨傘』(1964)
  22. ゴダール『気狂いピエロ』(1965)
  23. ゴダール『アルファヴィル』(1965)
  24. ヴァルダ『アデュー・フィリピーヌ』(1965)
  25. リヴェット『修道女』(1966)
  26. ロメール『コレクションする女』(1967)
  27. ドゥミ『ロシュフォールの恋人たち』(1967)
  28. ロメール『モード家の一夜』(1969)
  29. シャブロル『肉屋』(1970)
  30. ロメール『クレールの膝』(1970)