2017/04/23

シェイクスピア『ソネット集』 第64歌

滅びた時代を埋めた財貨と栄光の墓が
時の容赦ない手に朽ちる様を見てきた。
かつては聳え立っていた塔が崩れ去り
真鍮の永遠が死の怒号にひれ伏す様も。

飢えに駆られた海が攻め立てていって
岸辺という王国の覇権を握るやいなや
堅固な陸地も大海原を勝ち取るという
獲得の喪失と喪失の獲得も一通り見た。

こうして領土を取り合っているうちに
その領土が荒廃していく様も見てきた。
破滅を見るたび、僕は考えさせられた
時が僕の愛しい人も奪いに来ることを。

僕は人が死ぬかのような気持ちになり
失いたくないものを抱えて涙を流した。