2017/11/19

D・ロセッティ『命の棲む家』「心の避難港」

第22歌 心の避難港

彼女はたまに僕の腕の中で子供になり
愛が追い求めた黒い翼の下で縮こまる――
静かな涙を溢れさせ、顔を背けながら
微弱な警報を不可解なほど重ねている。
僕もよく自分の精神に痛みを負っては
彼女の深い抱擁という隠れ家を求める――
そこは悪を全て防ぐ強力な要塞であり
最高の対抗魔法がある快い安全地帯だ。

僕らの夜の光にして昼の影である愛は
僕らを子守唄で休ませ、逃げ場の無い
騒乱の昼に降り注ぐ矢を払ってくれる。
愛の光が満月のように愛の空気を貫く。
彼方へせせらぐ柔らかな水流のように
僕らの精神は応え合って輪唱を奏でる。

・メモ
「彼方へ」(to the moon)は熟語にした。
直前の「満月」のこだまが消えたのが残念。

Dante Rossetti. "Heart's Haven"
in The House of Life (1898).