2017/10/15

C・ロセッティ『小鬼の果実売り』「三つの季節」

「希望をカップに一杯!」と言う彼女。
春の花盛りが老けないように。
ワインの深紅も貧しく冷たい
豊かな真紅の唇と比べれば。

「恋心をカップに一杯!」何と小さな、
何と柔らかな声。そう言うと
彼女の赤らんだ頬が微笑んだ
雪の肌に夏が訪れたように。

「記憶をカップに一杯!」
冷めた一杯を独りで飲み干す。
秋の風は悼むような声を上げ
侘しい海を吹き抜けていく。

希望、記憶、それから恋心。
美しい朝には希望を、昼には
恋心を、そして薄暗い夕闇と
独りぼっちの鳩には記憶を。

Christina Rossetti, "Three Seasons"
in Goblin Market (1862).