2017/05/09

シェイクスピア『ソネット集』 第84歌

最高の言葉なら言い勝てるのだろうか
君しか君はいないという贅沢な賛辞に
壁に囲まれた宝庫である君の中にしか
君に釣り合う言い回しは育たないのに?

詩人のペンに宿る痩せ細った貧困には
その主題に貸すべき栄光が少しもない。
むしろ君を描く詩人こそ、君は君だと
語ることで作品に箔をつけられるのだ。

詩人が君に書かれたものをただ筆写し
自然が明示したものを悪くしなければ
君の写しが詩人の機知に名声を与えて
その文体も遍く賛嘆されることだろう。

自分への美しい祝福を呪うことになる
もし君が自分を汚す賛辞を好むのなら。