2017/05/08

シェイクスピア『ソネット集』 第79歌

僕だけが君の手助けを求めていた頃は
僕の詩だけが君の優美さを備えていた。
だが今や僕の優美な詩句は枯れ果てて
僕の病んだムーサはその地位を失った。

愛しい人よ、君という愛すべき主題が
僕より立派なペンの仕事なのは当然だ。
だがその詩人も君に閃きをもらうなら
君から奪って君へ払い返すに過ぎない。

詩人は自分から君に貸すはずの美徳を
君の品行から盗み、君に与える美貌も
君の顔つきに見出す。詩人の賛辞には
君に住まうものを超えるところがない。

君は詩人の言葉に感謝しなくてもいい
君への借金を君が返しただけだからだ。