2017/05/02

シェイクスピア『ソネット集』 第74歌

非情な逮捕の手が来ても甘んじてくれ
保釈も認めずに僕を連れ去るとしても
僕の人生がこの文字列に残した資産は
形見として君の側にいてくれるだろう。

この詩を読み返す度に思い出すだろう
僕の肉体が君に捧げられていたことを。
土で出来た肉体は土に還って当然だが
それ以上に大切な僕の魂は君のものだ。

つまり君は命の残骸を失うだけなのだ
蛆虫の餌になるのはただの死体だから。
悪党のナイフに倒れた小心者の体など
君が思い出すに値しない卑しいものだ。

体の価値は内に備わる心の価値であり
心の価値は君に残した詩の価値なのだ。