2017/05/25

シェイクスピア『ソネット集』 第113歌

あなたと離れ、瞳は心に引きこもった。
僕の進んでいく方向を導くはずの瞳は
役目を果たしているのにどこか盲目で
見えるように見えて視力を失っている。

この瞳は心に像を届けてくれないのだ
鳥や花の姿形なら瞳に映っているのに。
心は瞳の前を過ぎ去る対象に与れない
瞳の捉えたものが視覚に残らないのだ。

一番荒れた風景も一番穏やかな風景も
一番甘美な風物も一番醜悪な被造物も
山も海も、昼も夜も、烏や鳩でさえも
見たものは全て君の姿になってしまう。

余裕が無くなるほど君で一杯になった
全く誠実な心が瞳の誠実さを奪うのだ。