2017/05/18

シェイクスピア『ソネット集』 第102歌

僕の愛は見かけは弱くても強いものだ。
僕は愛を見せないが愛してはいるのだ。
愛は売られてしまう、その高い値段を
所有者の舌が遍く公表してしまったら。

僕らの愛が新鮮だったのは春のことだ
その愛に僕はよく挨拶の歌を聞かせた。
小夜啼鳥のように夏を前に歌いだして
季節が熟してきた頃に喉を休めるのだ。

歌わずとも、夏の楽しさは変わらない
小夜啼鳥の追悼の歌に静まる春の夜と。
とはいえ、野鳥の音楽が枝々を覆うと
甘美な歌も聴き慣れて貴い輝きを失う。

だから小夜啼鳥のように口を閉ざそう
君が僕の歌に飽きてしまわないように。