2017/04/14

シェイクスピア『ソネット集』 第56歌

奮い立て、甘美な恋心よ。言わせるな、
お前の切れ味が食欲よりも鈍いなんて。
食欲は今日の餌で満たされたとしても
明日にはかつての勢いで鋭くなるのだ。

恋心よ、お前もそうあれ。たとえ今日
飢えた瞳が満腹になって瞼を閉じても、
明日また瞼を開き、生かし続けてくれ
絶え間ない鈍麻に晒される愛の想いを。

この切ない空白の時間は海に似ている。
結ばれたばかりの二人は両岸に分かれ
岸辺を訪れる日々の中で目にするのだ、
海が恋人との再会に祝福される光景を。

この空白は冬とも言える。不安の力で
夏の到来が待ち遠しく尊くなるからだ。