2019/06/16

新訳 W.シェイクスピア『ソネット集』 No. 49

【記事について】
W.シェイクスピア『ソネット集』に収められた154のソネット(14行の定型詩)を順番に訳していきます。翻訳は今回で3回目になります。

【詩について】
前回と同じく、今回の第49歌は美青年宛のソネット(1~126番)の一つです。この詩は青年に見限られる将来を見据えた一篇で、whenの繰り返しが印象的な作品です。そうした将来を見据えてどうするかというと、詩人はあらかじめ「自分は無価値であり、君は僕を捨てて当然だ」と青年の心変わりを自虐的に弁護するつもりでいるようです。ちなみに、この詩には、お馴染みの会計的イメージや法廷的イメージが用いられています。

【翻訳】
もし来るものなら、その時に備えよう
僕の欠点に曇る君の表情が見える時に、
君の愛がその総資産の計算を済ませて
忠告者の見識を得た監査を求める時に、
君が赤の他人かのように僕とすれ違い
その瞳の太陽で挨拶をしなくなる時に、
愛が心を改めて愛ではないものとなり
尤もな理由から醒めきってしまう時に、
そうした時に備え、ここで籠城しよう、
僕自身の値打ちについての知識の中で。
自分に不利になるようにこの手を挙げ
君の側の法的根拠を弁護するとしよう。
君は卑しい僕を法の力に委ねるべきだ、
僕が愛される根拠を提出できない限り。

【原文】(表記は現代英語)
Against that time, if ever that time come,
When I shall see thee frown on my defects,
When as thy love hath cast his utmost sum,
Called to that audit by advis'd respects;
Against that time when thou shalt strangely pass,
And scarcely greet me with that sun, thine eye,
When love, converted from the thing it was,
Shall reasons find of settled gravity;
Against that time do I ensconce me here,
Within the knowledge of mine own desert,
And this my hand, against my self uprear,
To guard the lawful reasons on thy part: 
   To leave poor me thou hast the strength of laws,
   Since why to love I can allege no cause.