2017/05/18

シェイクスピア『ソネット集』 第100歌

どこだ、ムーサよ。君は語るべき人を
君の全ての力をくれた人を忘れたのか?
価値のない歌に君の情熱を費やしては
その光を卑しい題材に貸して失うのか?

記憶のないムーサよ、帰って取り戻せ
無駄に費やした時間を、優美な言葉で。
君の歌声を大切にしてくれる耳に歌え
君のペンに技巧と題材を恵む人の耳に。

休息するムーサよ、起きて愛しい人の
美貌に時が皺を刻んでいるかを調べよ。
皺があれば、老いと戦う風刺詩となり
時の略奪に対する軽蔑を広めるがいい。

時が蝕む前に愛しい人の名を高めれば
君の詩も時の大鎌や月鎌を免れるのだ。