2017/11/09

D・ロセッティ『命の棲む家』「沈黙の正午」

第19歌 沈黙の正午

生い茂る新緑に君の手のひらが広がり――
その指先は薔薇色の花のように見える。
君の瞳は和やかだ。草地の明暗が揺れ、
上には離合集散にうねる空模様がある。
僕らの巣の辺りは、目の届く限り一面、
銀の縁をした金の金鳳花畑が広がって
その山査子の生け垣を杓が囲んでいる。
砂時計のような目に見える沈黙がある。

陽光の差し込む茂みの奥には、蜻蛉が
空からほどけた青い糸のように止まる
天から舞い降りた君との時間のように。
ああ!心で抱き合う間も、不死の遺産、
僕らの二重の沈黙を愛の歌へと変える
親密で不正確な時間は過ぎ去っていく。

Dante Rossetti. "Silent Noon"
in The House of Life (1898)