【詩について】
・ラルフ・ウォルドー・エマソン(Ralph Waldo Emerson, 1803-1882)の「弁明」(Apology)の訳です。少しかみ砕いて訳しています。
・自然を聖書のように扱うエマソンらしい詩の一つで、自然の声を人々に届ける詩作を一つの仕事として弁護している一篇です。労働と芸術を勤勉と怠惰として対立させず、人間の社会でそれぞれの役割を持つものとして考える発想は、ピューリタンの労働倫理を意識したものかもしれません。
・この詩を収録した『詩集』はパブリック・ドメインになっていて、グーテンベルクで読めます。
Poems (1911)【https://www.gutenberg.org/ebooks/12843】
【翻訳】
薄情で粗野だとは思わないで下さい、
私がひとり林や谷を散策していても。
私は木々を統べる神のところへ赴き
彼の言葉を人々に集めてきましょう。
怠惰への叱責もどうか免じて下さい、
私が川のほとりで腕を組んでいても。
あの空を漂っている雲の一つ一つが
私の書物に文字を綴ることでしょう。
働く仲間たちよ、叱らないで下さい
私が役に立たない花を摘んできても。
私の手の中にある野菊の一本一本が
洞察を背負って帰ってくるでしょう。
神秘というものが存在するとしても
その姿は花の中にしかないでしょう。
秘密の歴史が紡がれているとしても
木陰の鳥にしか物語れないでしょう。
あなたたちの畑の一つ目の収穫物を
たくましい雄牛たちが持ち帰るなら
あなたたちの土地の二つ目の作物は
私が集めて一編の歌へ変えましょう。
【原文】
Think me not unkind and rude
That I walk alone in grove and glen;
I go to the god of the wood
To fetch his word to men.
Tax not my sloth that I
Fold my arms beside the brook;
Each cloud that floated in the sky
Writes a letter in my book.
Chide me not, laborious band,
For the idle flowers I brought;
Every aster in my hand
Goes home loaded with a thought.
There was never mystery
But 'tis figured in the flowers;
Was never secret history
But birds tell it in the bowers.
One harvest from thy field
Homeward brought the oxen strong;
A second crop thine acres yield,
Which I gather in a song.