2015/12/31

翻訳 A.テニスン「旧き年の死(The Death of the Old Year)」

膝を隠す深さに冬の雪は積もり、
冬の風は物憂げに溜息を吐いている。
諸君、教会の鐘を鈍く悲しく鳴らそう、
そろそろと歩み、ひそやかに語ろう、
旧き年が死にゆくところなのだから。

   旧き年よ、死んではならない。
   ほら、君は僕らの許へ颯爽と現われ、
   僕らと共に悠々と暮らしたんだ。
   旧き年よ、死んではいけない。

彼は静かに伏せたまま、動かない。
彼が日の目を見ることは無いだろう。
彼の命はこの他にもう無いのだ。
彼は友人と本当の恋人をくれたのだが、
新年はみんな持ち去ってしまうだろう。

   旧き年よ、逝ってはならない。
   ほら、久しく君は僕らと一緒にいて、
   喜びを僕らと共に知ったんだ。
   旧き年よ、逝ってはいけない。

彼は満杯の盃を縁まで泡立てた。
これより素敵な年はもうあるまい。
たとえ彼の目が霞んでいっても、
たとえ彼を悪く言う敵がいても、
彼は僕にとって一人の友であった。

   旧き年よ、死んではいけない。
   ほら、僕らは君と共に笑って泣いて、
   僕の心も半分は君と共に死ぬんだ、
   旧き年よ、もし君が死ぬのなら。

彼は洒落冗談に欠かなかったけれど、
あの陽気な軽口も全てお仕舞だ。
彼を見届けるために荒れ野を越えて、
子孫たちが早馬を急ぎ走らせても、
彼はその前に亡くなっているだろう。

   全ては彼のものとなるんだ。
   その夜は瞬いて冷たく、友よ、
   新年は元気良く堂々と、友よ、
   自分のものを取りに訪れるんだ。

彼の呼吸の苦しさよ!雪の彼方に
今しがた、僕は長鳴き鶏の声を聞いた。
影たちがあちこちでゆらめている。
蟋蟀が歌っている。灯火は下火だ。
もうすぐ、十二時になるのだ。

   死ぬ前に握手を交わそう。
   旧き年よ、僕らは切に君を悼むよ。
   僕らは君に何ができるだろうか?
   死ぬ前に聞かせてくれないか。

彼の顔が痩せ細っていく。
ああ!僕らの友は逝ってしまった。
その目を閉じ、顎を結わえてやろう。
その体から離れて、彼を迎えよう、
彼はそこに一人で立っている。

     戸口で待っているんだ。
     新しい客人の足音がする、友よ、
     戸口には新年がいるんだ、友よ、
     ドアには一人の新年が。